根本昌明(ねもと・まさあき)

レーベンバッハ吹奏楽団演奏会の根本昌明(ねもと・まさあき=60歳)が、1000万円の借金をして、2010年7月25日に東京オペラシティ・コンサートホールで、演奏会「ベートーヴェンへの感謝の夕べ2」を開催します。

根本昌明はプロの指揮者でなく、独学で指揮を学んだ素人。清掃員の仕事を続けながら、プロの指揮者を目指しています。そして、350万円の貯金と1000万円の借金でコンサートを開く。ホールが満員になっても、借金が残るとされるコンサートである。

根本昌明がベートーベンとの出会いは中学生の時だった。イジメに苦しんでいた根本昌明をベートーベンの音楽が支えていた。ベートーベンを聞くと自然と手が動くようになり、いつしかプロの指揮者になりたいと思うようになっていた。

しかし、一族は銀行員という固い家系だった。安定した職業について欲しいという親の意向から、指揮者への夢を断念して、大学卒業後は教員についた。

1974年に上智大学外国語学部英語科卒業を卒業して、海老名市の中学校で英語教員として働き始めた。中学校で吹奏楽部の顧問を任されたことで、根本昌明に再び音楽への思いが芽生え始めた。

やがて、根本昌明は生徒やOBと共に音楽団「レーベンバッハ吹奏楽団」を結成した。演奏会を重ねていると、演奏が音楽評論家の宇野功芳の目にとまり、宇野功芳から絶賛された。

1996年にはプロのオーケストラを指揮するチャンスに恵まれた。客はまばらで、演奏会は成功したとは言えないが、一部のクラシック関係者から高い評価を得て、プロの音楽家としての道が開けてきた。

しかし、うつ病を発症。授業と演奏会の両立というハードワークからうつ状態に陥り、自殺未遂を起こして入院することとなった。

1年半後に退院した根本昌明は、50歳で安定した教員の職を捨て、プロの音楽家を目指した。20年間連れ添った妻は、清掃員を続けながらプロの音楽家を目指す夫の呆れて、根本昌明の元を去っていった。

しかし、根本昌明に理解者が現れた。それは教員時代の教え子・君江だった。2人は2006年に開催した中学校の同窓会で再開した。夫と死別していた君江は、根本昌明の夢を共感して、根本昌明と再婚することを決意した。

根本昌明は新しい妻・君江の理解を得て、7月25日に開催する演奏会「ベートーヴェンへの感謝の夕べ2」で、東京フィルハーモニー楽団と二期会合唱団とを指揮します。

ホールは1469席で、現在チケットは160枚しか売れていないとのこと。東京オペラシティのHPによると、チケット代金はS席で1万2000円、A席で1万円、B席で8000円です。