日本テレビ系ドラマ「美丘(みおか)」の原作となる石田衣良の小説「美丘」のあらすじとネタバレ後編です。前編は「あらすじ前編」をご覧下さい。
このページには、あらすじやネタバレを含んでいるので、知りたくない方は閲覧しないで下さい。
秋になったある日のこと。峰岸美丘は明知大学の図書館で倒れた。ついに、恐れていたクロイツフェルト・ヤコブ病が発症してしまった。クロイツフェルト・ヤコブ病を発症したが、入院はせず、残された時間を2人で過ごすために、2人は同棲することを選んだ。
ある日、橋本太一が夜中に目を覚ますと、焦げ臭い臭いがした。キッチンには峰岸美丘が立っていた。橋本太一が大好きなシチューを作ろうとしていたが、シチューの作り方が分からなくなり料理を焦がしていたのだった。
峰岸美丘は少しずつ、記憶を失っていった。喋るスピードも遅くなっていった。今までは一緒に歩くときは手をつながなかったが、いつも手をつなぐようになっていた。自分がどこにいるのか分からなくなるのが怖かったから。
ある日、カフェで橋本太一が言った。喋ったり、書いたりすることは記憶のトレーニングになるから、症状を遅らせるかもしれないと。そして、毎日1通の手紙を書くことを提案した。
峰岸美丘は毎日1通の手紙を書くことにした。自分がいなくなるまで読んではいけない手紙を毎日書き続けた。
ある日、峰岸美丘はiPod(アイポット)を購入した。iPodに自分の声でメッセージを残すためだった。峰岸美丘は文字を忘れてしまい、もう手紙が書けなくなっていた。
12月に入ると峰岸美丘は歩くことも困難となっていた。入院すると二度と出てこられないことが分かっていたため、病院を嫌っていた峰岸美丘が、病院へ入ると言い出した。一度言い出したら後には引かない性格は変らず、峰岸美丘は入院することになった。
自分だけこんな目にあっており、峰岸美丘は元気なみんなを憎らしく思っていた。もう自分の言った言葉さえ覚えておらず、知らないうちに暴言を吐いているのではないかと心配していた。そんな自分を家族や橋本太一に見せるのが嫌で、入院を選んだのだった。
ある日、橋本太一がお見舞いに行ったときのことだ。峰岸美丘は橋本太一のことが分からなくなっていた。橋本太一は「俺だよ。一緒に住んでいる太一だよ」と峰岸美丘に詰め寄ると、峰岸美丘は失禁してしまった。橋本太一が床に流れた尿を拭き取っていると、いつもの峰岸美丘にもどった。そして、峰岸美丘は「白いリンゴ」を持って帰ってと言った。
「白いリンゴ」とは、峰岸美丘が手紙の代わりにメッセージを吹き込んだiPod(アイポット)のことで、iPodには、校舎の屋上で出会ったときの事や五島麻理にぶたれたことなど、様々な思い出が吹き込まれていた。
クロイツフェルト・ヤコブ病の進行は早く、峰岸美丘はもう手も足も動かなくなり、喋ることもできなくなっていた。自分で呼吸することも出来ず、酸素チューブや点滴で生かされていた。
12月23日、病室に峰岸美丘の母親や姉も集まった。もちろん、橋本太一も居る。父親も遅れるが病室に来るという。久しぶりに家族がそろった病室はにぎやかだった。そこで、峰岸美丘は最後の力を振り絞って「やーくーそーく」とつぶやいた。母親も姉も約束に心当たりはなかった。橋本太一は峰岸美丘の言葉を聞いて病室を飛び出した。
様々な思い出が詰まった峰岸美丘のiPodには、「あの約束を守って欲しい」というメッセージが残っていた。あの約束とは、レイブパーティーの時にした「いつか、私が私でなくなったら、太一君のこの手で終わりにして欲しい」という約束だった。
iPodには「自分らしくなって、私の分までいきいきといきちゃなよ。パンクが好きなら、髪の毛を真っ赤の染めて、ツンツンに立てればいいじゃない」というメッセージもあった。
クリスマスイブに橋本太一は美容室へ行った。髪の毛を赤く染め、ツンツンに立てた。そして、花束を持ち峰岸美丘の病室へ向かった。約束を果たすために。
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